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続日本紀宣命について

平安時代の和文とは異なり、上代の散文資料は、変体漢文(漢文・和化漢文)・宣命体という上代特有の表記法で書かれています。宣命体は名詞・動詞・形容詞などの語幹を大字で書き、助詞・助動詞・活用語尾などは一字一音の万葉仮名の小字で書く文体のことで、上代語のままで訓み下せるため、当時の文法を知る上で、非常に貴重な資料と言えます。宣命体資料で最古のものは文武天皇即位宣命(続日本紀宣命第一詔、文武元年・697)です。続日本紀宣命は中国の詔書を下書きにして作成されたものと考えられ、文中には部分的に漢文がまじっているものの、天皇の詔勅(しょうちょく)として、国文を表記したものであり、読まれる場合も日本語の散文として読み上げられたと言われています。しかし、宣命体文献の文法に関しては、なぜか、研究資料が少なく、宣命テキストを頼りに調査するしかありません。明治以降出版された宣命の校訂本のほとんどは本居宣長の『続紀歴朝詔詞解』(1803)に従って書かれています。しかし、『続紀歴朝詔詞解』の大字と小字は、本居宣長個人の見解によって古写本を改変したものです。また、北川和秀『続日本紀宣命 校本・総索引』(吉川弘文館)の大字と小字も、北川氏独自の見解であり、宣命テキストの中に古写本をそのまま伝えるものはありません。しかし、北川氏の続日本紀宣命は総索引があるため、このテキストを中心に研究を進めています。

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